渦中のビヨンセの衣装デザインに対して、空山基の所属ギャラリー NANZUKA が正式に声明を発表
空山基の『Instagram』投稿を補完する内容に
先日、空山基が自身の『Instagram(インスタグラム)』でビヨンセ(Beyoncé)のツアー衣装デザインについて苦言を呈した。既に複数メディアで報じられているため、ご存じの方も多いと思うが、その内容は「あなたは私に“正式”に連絡すべきだったよ。そしたらThe Weekndの時みたいにもっといいものを作ってあげられたのに(原文:Yo @beyonce 🤘 You should have asked me “officially” so that I could make much better work for you as like my man @theweeknd ✊)」というもの。本件について、所属ギャラリーの『NANZUKA(ナンヅカ)』から正式な声明が発表された。
(以下、声明を引用)
空山の主張は、シンプルです。今回のビヨンセのツアーで使用された一部の衣装デザイン、および関連するツアー商品は、「自分が手がけたものではない」ということです。その事を公表する理由は2つあります。1つめは、The Weeknd、Stella McCartneyなど、現在進行形でコラボレーションをしているパートナーへの配慮。もう1つは、ファンからの問い合わせに対する回答です。まず、一部で指摘のあった「Metropolis」の影響に関してですが、アートにおける引用は、美術史的な方法論に基づいて、美学的な観点で議論されるべき事項です。大前提として、私たちはアートの歴史が、影響関係の連鎖で成り立っていることを踏まえる必要があります。1920年カレル・チャペックによる戯曲「R.U.R」において生まれたロボットという概念は、1927年フリッツ・ラングの映画「「Metropolis」に登場するマリアにおいて、女性の身体性を纏ったデザインを伴って広く知れ渡ることになりました。そして、空山が1980年以降描き続けているピンナップのロボットが、このマリアのデザインを美学的に更新した、新たな作品だと捉えることは、アートの文脈において妥当な見解だと考えます。
その上で、今回のビヨンセの衣装が、果たして「Metropolis」から直接影響されたものなのか、あるいは空山作品からインスパイアされたデザインなのか、という事が美術史の文脈からして本質的に問われるべき論点です。
空山の作品は、これまでも様々な文脈で引用されています。先日Netflixの番組「僕らを作った映画たち」でもその影響関係が公表された「ロボコップ」、Thierry Muglerの95AWコレクション(「influenced by Hajime Sorayama」というクレジットの基で発表)などは、その一部の例に過ぎません。
今回のBeyonceの衣装が、空山作品と類似しているかの判断を司法で争う事は、空山にとっての優先事項ではありません。空山の関心は、「自分がやれば、もっとカッコいいものにできる」というコメントが示しているように、“空山風”のデザインが、本人のものだと認識されることへの拒否感です。私たちが求めている事は、アーティストへのリスペクトであり、投げかけた問題提起に対する是非は、みなさんの意見で結論が出ることだと考えています。
最後に、今回の空山の意見表明がこのタイミングになった理由は、シンプルについ先日まで事実関係を把握していなかったためです。
以上、南塚真史
株式会社NANZUKA
空山氏の投稿には、本稿執筆時点で3500を超えるコメントが付いており、上記は一部それらのコメントに回答する形となっている。